景品表示法のWEB弁護士相談

ステルスマーケティング(ステマ表示)の法規制

ステルスマーケティングの規制が諸外国で強化されるなか、日本でもステルスマーケティングが規制されることとなりました。
規制の具体的な内容や今後の対策について確認しましょう。

インデックス
  • 業務内容

    ステルスマーケティングが規制されると聞きましたが、そもそもステルスマーケティングとは何ですか。

    広告であるにもかかわらず、広告であることを隠すことをステルスマーケティングといい、略してステマと表現することもあります(以下「ステマ表示」といいます。)。

    例えば、事業者がインフルエンサーに対価を支払い、インフルエンサーの運営するウェブサイト上で、事業者の指定した内容で自社商品を紹介させているにもかかわらず、事業者の広告であることを伏せて、あたかもインフルエンサーの感想として表示している場合などがステマ表示に該当します。

    ステマ表示について何が変わったのですか。

    景品表示法5条第3号の規定に基づく告示によって、ステマ表示が不当表示に該当することになりました。

    施行日はいつですか。

    2023年10月1日から施行されます。

    では、2023年9月以前に公開済みの広告の差替えまでは検討しなくてもよいですか。

    施行日前に投稿等されたステマ表示が、施行日後も表示されている場合には、対応が必要となる可能性があります。

    ステマ表示が規制の対象となった景品表示法5条第3号の規定に基づく告示とは、どういった内容なのでしょうか。

    次の要件を全てみたすものが「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」と定義され、景品表示法の不当表示に該当するとされています。

      事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるものであるもの

    (参照:景品表示法5条3号、令和5年3月28日内閣府告示第19号)

    誰が規制の対象者となるのでしょうか。

    商品、サービスを供給する事業者(広告主)が規制の対象となります。

    社外のインフルエンサーに依頼して投稿してもらったという場合であれば、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」(事業者の表示)という要件に該当しないということで良いのでしょうか。「事業者の表示」とは、どのような内容なのかもう少し詳しく教えてください。

    一見すると第三者の表示のように見えるものの、事業者が表示内容の決定に関与したと認められる場合には、事業者の表示に該当します。
    つまり、客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められない場合には、当該第三者の表示ではなく、事業者の表示であると判断されてしまいます。そのため、社外のインフルエンサーに依頼して投稿してもらった表示が、事業者の表示に該当すると判断されてしまうことがあるので注意が必要です。

    事業者が表示内容の決定に関与したと認められる場合とは、どのような場合をいうのでしょうか。

    これは、事業者が自ら行う表示と事業者が第三者をして行わせる表示に分けて考える必要があります。

    ・事業者が自ら行う表示では、事業者が自ら表示しているにもかかわらず、第三者が表示しているかのように誤認させる表示などが、事業者が表示内容の決定に関与したとされてしまいます。
    また、事業者と一定の関係性を有し、事業者と一体と認められる従業員や、事業者の子会社等の従業員が行った事業者の商品又は役務に関する表示も含まれると考えられています。なお、この場合には、従業員の事業者内における地位、立場、権限、担当業務、表示目的等の実態を踏まえて、事業者が表示内容の決定に関与したかについて総合的に考慮し判断するとされています。

    例えば、商品の販売担当者が、販売を促進する目的で、自社商品の画像や文章を投稿したり、競合他社の製品を誹謗中傷して、自社商品の品質や性能の良さに言及する場合などがこれに該当します。

    ・事業者が第三者の表示内容の決定に関与している場合とは、第三者に対して当該第三者のSNS上や口コミサイト上等に自らの商品又は役務に係る表示をさせる場合などが該当すると考えられています。

    例えば、事業者がアフィリエイターに委託して、アフィリエイターが運営する比較サイトにおいて、自社商品を表示させる場合などがこれに該当します。

    では、どのような場合であれば、事業者が表示内容の決定に関与していないということになるでしょうか

    客観的な状況に基づき、第三者の自主的な意思による表示内容と認められる場合です。事業者が表示内容の決定に関与していないとされるものとして、以下のような事例が挙げられます。

    • 第三者が事業者の商品又は役務について、SNS等に当該第三者の自主的な意思に基づく内容として表示(複数回の表示も含む。)を行う場合
    • 事業者が第三者に対して自らの商品又は役務を無償で提供し、SNS等を通じた表示を行うことを依頼するものの、当該第三者が自主的な意思に基づく内容として表示を行う場合
    • アフィリエイターの表示であっても、事業者と当該アフィリエイターとの間で当該表示に係る情報のやり取りが直接又は間接的に一切行われていないなど、アフィリエイトプログラムを利用した広告主による広告とは認められない実態にある表示を行う場合
    • ECサイトに出店する事業者の商品を購入する第三者が、自主的な意思に基づく内容として当該ECサイトのレビュー機能を通じて、当該事業者の商品等の表示を行う場合
    • ECサイトに出店する事業者が自らの商品の購入者に対して当該ECサイトのレビュー機能による投稿に対する謝礼として、次回割引クーポン等を配布する場合であっても、当該事業者(当該事業者から委託を受けた仲介事業者を含む。)と当該購入者との間で、当該購入者の投稿(表示)内容について情報のやり取りが直接又は間接的に一切行われておらず、客観的な状況に基づき、当該購入者が自主的な意思により投稿(表示)内容を決定したと認められる投稿(表示)を行う場合

    (参照:運用基準第2・2・(1))

    例えば、インフルエンサーが、たまたま見つけたカフェで珍しいスイーツを見つけたため、カフェの運営会社からの指示や対価の提供を受けることなく、そのスイーツを自身の自主的な意思に基づいてSNS上に投稿した場合などが挙げられます。

    事業者は、インフルエンサー等の第三者に依頼をする際に、「感想をSNS等に投稿するかしないかは自由」「投稿する場合には自身の自主的な意思に基づいて投稿内容を決定してほしい」とだけ伝えておけば問題ないのではないでしょうか。

    パブリックコメント(No.84)では、同様の意見(質問)に対して「個別具体的な事案ごとに判断されるものである」といった考え方が示されています。
    自主的な意思による表示内容であるかという点については、第三者と事業者との間の表示内容に関する情報のやり取りの有無、表示内容に関する依頼や指示の有無、事業者から第三者への対価提供の有無、事業者と第三者の関係性などの事情を総合的に考慮して判断されるため、これらの事情も踏まえて検討していく必要があります。

    「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」というのは、どのように判断されるのでしょうか。

    一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっているかどうかという点から判断されます。逆にいえば、第三者の表示であると一般消費者に誤認されないかどうかを表示内容全体から判断することになります。

    例えば、事業者の表示であることが全く記載されていない場合やアフィリエイト広告において事業者の表示であることを記載していない場合などが明瞭となってない事例といえます。

    一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっているかどうかという点は、どのような場合に明瞭になっていないとされてしまうのでしょうか。

    事業者の表示であることが全く記載されていない場合もそうですが、事業者の表示であることが不十分な場合も明瞭となっていないとされてしまうことがあります。

    事業者の表示であることが不明瞭な方法で記載されているものの具体例としては、以下のような事例が挙げられます。

    • 事業者の表示である旨について、部分的な表示しかしていない場合
    • 文章の冒頭に「広告」と記載しているにもかかわらず、文中に「これは第三者として感想を記載しています。」と事業者の表示であるかどうかが分かりにくい表示をする場合。あるいは、文章の冒頭に「これは第三者としての感想を記載しています。」と記載しているにもかかわらず、文中に「広告」と記載し、事業者の表示であるかどうかが分かりにくい表示をする場合
    • 動画において事業者の表示である旨の表示を行う際に、一般消費者が認識できないほど短い時間において当該事業者の表示であることを示す場合(長時間の動画においては、例えば、冒頭以外(動画の中間、末尾)にのみ同表示をするなど、一般消費者が認識しにくい箇所のみに表示を行う場合も含む。)
    • 事業者の表示である旨を、文章で表示しているものの、一般消費者が認識しにくいような表示(例えば、長文による表示、周囲の文字の大きさよりも小さい表示、他の文字より薄い色を使用した結果、一般消費者が認識しにくい表示)となる場合
    • 事業者の表示であることを他の情報に紛れ込ませる場合(例えば、SNSの投稿において、大量のハッシュタグ(SNSにおいて特定の話題を示すための記号をいう。「#」が用いられる。)を付した文章の記載の中に当該事業者の表示である旨の表示を埋もれさせる場合)

    (参照:運用基準第3・1・(2))

    それでは、投稿などをする際に「PR」と表示しておけば大丈夫、ということでしょうか。

    「PR」、「広告」、「宣伝」といったSNS等で一般的に利用されている文言による表示を行う場合には、事業者の表示であることが明瞭であると考えられています。もっとも、文中で「これは第三者として感想を記載しています。」といった記載をするなど、表示内容全体から見て事業者の表示であることが明瞭となっていないと判断されてしまう場合もあるので注意が必要です。

    ステマ表示を行ったことにより、不当表示と判断されてしまった場合にどのようなペナルティがあるのでしょうか。

    他の不当表示と同様に、企業名等が消費者庁のウェブサイトに公表されることになります。

    事業者(広告主)としては、まず何から対応をすればよいのでしょうか。

    従業員等が発信をする記事を含め、外部に表示する記事や広告などが、事業者の表示に該当するかという点を確認しましょう。事業者の表示に該当する場合には、事業者の表示であることが明瞭となっているかを確認し、不明瞭な部分があれば明瞭化するような措置を講じましょう。

    ご注意いただきたい点
    • 2023年10月1日に施行されている法令等をもとに執筆されています。同日以降の改正の有無については、個別にお問い合わせください。
    • この記事で登場する法令名と資料の略称は、次のとおりです。
      • 景品表示法:「不当景品類及び不当表示防止法」
      • 運用基準:「『一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示』の運用基準」
    • 広告表示や景品の取扱いについての企業・団体様からの初回のご相談は60分無料ですので、お気軽にお問い合わせください。なお、個人の方からの景品表示法に関するご相談には、一律対応しておりません。
    執筆者紹介

    弁護士 藤尾将之(永井法律事務所 弁護士)

    2019年弁護士登録。契約書の作成・レビュー、広告物・キャンペーンの適法性チェック、個人情報保護法関連の相談対応、労務、債権回収などの企業法務案件に継続的に関与しています。 企業のご担当者からの初回のご相談は60分無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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